その人材、本物ですか?AIと共存の時代に「本物」の人材を確保するには?
- huminaresource
- May 19
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急増する「偽の求職者」
採用での対策が急がれる
アメリカの企業では、リモートワークの普及に伴い、AIやディープフェイクを活用して就職活動をする偽の求職者が急増しています。音声認証スタートアップ企業のPindropでは、上級エンジニア職に応募してきた「Ivan」というロシア人が、実はAIで生成された顔と声を使った偽の人物であったことが判明し、「Ivan X」と呼ばれています。この人物は、ウクライナ在住を名乗っていましたが、IPアドレスはロシアの北朝鮮国境近くにある軍施設を示していました。こうした偽の求職者は、生成AIを使って履歴書や本人確認書類を作成し、ビデオ面接ではディープフェイクで顔や声を偽装します。企業に採用されると、企業が知らないうちにシステムに侵入し、個人情報の盗難、コンピューターの乗っ取り、ウイルスの拡散などの不正行為を目的としたマルウェアの設置や機密情報の窃盗、給与の不正受給などのリスクをもたらします。
調査会社ガートナーは、2028年には世界の応募者の4人に1人が偽物になる可能性があるという危機的な状況を示唆しています。特にサイバーセキュリティーや暗号資産業界では被害が目立っており、BrightHireのCEOは、2024年に入って偽の求職者が爆発的に増えたと話します。また、米司法省は、北朝鮮とつながりのあるIT技術者が300社以上のアメリカ企業に偽名で就業し、給与を兵器開発資金として送金していたことを発表しました。これにはテレビ局、防衛関連企業、自動車メーカーなどの大手企業も含まれていました。
このような手口は北朝鮮だけでなく、ロシアや中国、マレーシア、韓国などにも広がっており、場合によっては業務を非常に優秀にこなす偽の従業員も存在します。サイバーセキュリティー企業KnowBe4でも、北朝鮮の技術者を誤って雇用していたことが、同従業員の不審な活動から発覚しました。ディープフェイク技術の進化により、今後こうしたリスクはさらに高まると予測されていますが、多くの企業はまだ問題の深刻さに気づいていません。今後、採用の現場でも本人確認やセキュリティ対策の強化が急務となります。
今の時代だからこそ注目される人材エージェンシーの信頼性
ディープフェイクや生成AIによるこのような採用詐欺が増える中、既存の人材エージェンシーの信頼性が再び注目されています。AI時代の到来の今だからこそ、信頼性と安全性を兼ね備えた採用方法として、人材エージェンシーを利用する価値は今後さらに高まっていくでしょう。人材エージェンシーを利用することで軽減できるリスクや、メリットを下記に紹介します。
1.身元確認・本人確認の信頼性
人材エージェンシーは、候補者を紹介する前に本人確認、経歴確認など、厳格な審査プロセスを実施することで、ディープフェイクや偽の履歴書による詐欺を未然に防止できます。
2.信頼できる候補者ネットワーク
長年かけて築いてきた人材データベースと登録ネットワークにより、信頼性の高い人材を迅速に紹介できるため、急な人材ニーズにも、即戦力を確保できます。
3.雇用リスクの軽減
偽の求職者を採用してしまうと、情報漏洩やマルウェアによる被害といった深刻なリスクが発生します。しかし、人材エージェンシーを通じた採用であれば、リプレイスメント制度や柔軟な料金プランにより、こうしたリスクを最小限に抑えることが可能です。
4. 採用コストと時間の削減
人材エージェンシーでは、時間をかけて求職者との信頼関係を築いていきます。その過程で、AIなどによるなりすましのような不自然な点にも気づきやすくなります。一見すると時間のかかるプロセスに見えますが、実は優秀な人材を見極め、採用するための近道とも言えるでしょう。
5.「人を通じた信頼」の再評価
テクノロジーによる偽装が増えるほど、「人からの紹介」や「リアルな信頼ネットワーク」の価値が高まっています。人材エージェンシーを通じた採用は、信頼と安全の証となります。
執筆者:
Chihiro Bjork
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