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変化する企業のダイバーシティ戦略:新たな大統領令への対応

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DEIの新定義と背景 

ご存知の通り、DEI:Diversity(多様性)、 Equity(公平性)、 Inclusion(包括性)は、現代の組織戦略における重要な概念です。2025年、トランプ政権の新たな大統領令により、企業のダイバーシティ施策は大きな転換点を迎えています。 

色々な情報が錯綜するなかで、この政策が求めているのは、従来の多様性重視のアプローチから、より中立的で能力本位の人材戦略への移行だと言えるでしょう。 

大統領令や連邦レベルでの変化が企業に与える影響はまだ不透明ですが、それぞれの組織がDEI施策の見直しを求められる可能性があります。こうした状況下では、企業は、インクルージョンと企業目標を整合させ、すべての従業員が価値を感じる環境を作りつつ、公平性への取り組みも継続することが重要です。政治的変化にかかわらず、公平でインクルーシブな職場づくりが最善の対応と言えるでしょう。

 

 

トランプ政権の新ガイドラインに対応したI&D施策の調整方法 

新大統領令「違法な差別の撤廃と能力主義の復活(Ending illegal discrimination and restoring merit-based opportunity)」は、企業のI&D(インクルージョン&ダイバーシティ)に大きく影響を与えています。


1月21日に発令された大統領令には、以下の内容が含まれています:

 

  • 司法長官が120日以内に違法なDEI施策を抑制するための具体策を提出

  • 9つの民間企業や非営利団体、教育機関に対する調査を開始

  • 問題のあるDEI施策を特定

  • 訴訟などの対策を立て、民間企業が違法なDEI(多様性・公平性・包括性)に関する差別や優遇をやめるよう促す

     

企業が見直しを求められるポイントは以下の通りです:

 

1. 法的枠組みの変更

  • 特定のグループへの優遇措置の禁止

  • 能力主義の徹底

  • 公平な機会提供の重視

     

2. フレームワークの再定義 米国人事管理協会(SHRM)は、従来のDEI(Diversity, Equity, Inclusion)から、IED(Inclusion, Equity, Diversity)へのフレームワーク変更を提案しています。この変更のキーポイントは、インクルージョンを最優先に位置づけることです。

 

 企業が取るべき具体的な対応としては、下記のようなものがあります。ここでポイントとなるのは、この変化を単なる政策修正と捉えず、組織文化の根本的な再考をする姿勢です。企業は形式的な対応ではなく、真のインクルージョンと能力主義を追求することが求められます。

  • 既存のI&D施策の包括的な法的監査

  • 採用・昇進プロセスの徹底的な再評価

  • 多様性の定義の拡大(人種、性別を超えた包括性)

  • 能力に基づく公平な評価システムの構築

  • インクルーシブな職場文化の創造(すべての従業員が自分らしく働き、能力を最大限に発揮できるような環境)

  • 属性に依存しない透明性の高い人材育成プログラム

     

違法と見なされるDEI施策とは?

  • クォータ制(例:採用者の30%を女性にするなど、採用における性別比率の指定、人種比率の設定)

  • 特定の属性(人種や性別など)を対象とした優先採用

  • 個人の属性を理由にした優遇措置(例:「同点の場合は女性を優先」)

     

これらの施策は違法とされる可能性が高いため、企業のI&D施策は法的リスクを避けるために慎重に見直す必要があります。

 

では、新たな「多様性」の定義は?

  • 従来の人種・性別の枠を超えた視点

  • 障がい者

  • 退役軍人

  • 社会的に不利な立場にある人々

  • 異なる経験や背景を持つ人材

     

なお、企業は、以下の取り組みを行うことで、リスクを早期に発見することが得策と言えるでしょう。

 

  • 法務チームとの綿密な協議:既存のインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)施策が反差別法や新たな政策に適合しているかどうかを確認するため、専門の法律顧問と協力して定期的に監査を実施

  • 採用・評価基準の徹底的な見直し:採用、評価、昇進において特定の性別や人種が不当に過剰に採用されたケースがないか、基準が公平であるか確認

  • 管理職向けトレーニングの実施:管理職向けのトレーニングを実施し、能力に基づいた評価と昇進の原則を強化すること

  • 透明性の高いキャリア開発プログラムの構築 

 2025年のダイバーシティ戦略は、単なる法令遵守を超えて、組織の持続的成長と競争力強化のための戦略的アプローチとして進化しています。政治的変動に左右されない、真に公平で革新的な職場環境の創出が不可欠となっています。

 

その実現の鍵となるのは:

 

  • 個人の能力を中心に据えた公正な評価

  • 組織全体の透明性確保

  • 継続的な学習と柔軟な適応力

  • 従業員の潜在能力を最大限に引き出す仕組みづくり

     

 人事部門は現在、組織変革の最前線に立っています。この変化は、単なる課題ではなく、組織を根本的に改革し、より強靭で革新的な企業文化を創るまたとないチャンスと言えるでしょう。

 

執筆者:

Chihiro Bjork

 
 
 

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