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従業員の離職の42%は防げる?離職原因の傾向と対策を解説


従業員の組織へのコミットメントは

過去最低レベルに

 昨今、自己都合による従業員の離職は、2015年以来最高水準にあります。管理職向けのコンサルティング・サービスなどを提供するGallupが今年5月に行った調査によると、米国の従業員の半数(51%)は、現在積極的に求職中で、その値は上昇し続けています。とはいえ、COVID-19によるパンデミックの最中に起きた大量離職ブーム以降は、経済と雇用市場の冷え込みにより自ら離職を選ぶ従業員は減り、離職率は安定してきました。ただ、従業員の組織に対する長期的なコミットメントは、過去9年間で最低値となっています。

 

 今後、雇用主が従業員保持への対策を講じない場合、将来的に人材を失い、人員補充のためのコストが発生することになるでしょう。人員補充にかかるコストは、管理職クラスには給与の約200%、技術職の専門家には給与の80%、現場従業員には給与の40%のコストがかかると言われています。

 

 ただし、こうした従業員の不満と自発的な退職は高い確率で防ぐことができるのです。昨年、自発的に退職した従業員の42%は、「管理職や組織が何かしら行動を起こしてくれていれば、離職をしなかった」と報告しています。組織は、有能な従業員が離職する前に、再びエンゲージメントを図るため、何ができるのでしょうか?

 前出のGallupによると、過去12カ月間に自発的に退職した717人を対象に行った全米規模の調査結果を受け、「管理職は、従業員の不満や離職が起きるのを待たずに、定期的に適切な対話の機会を持ち、従業員のエンゲージメントを維持する必要性がある」と強調しています。

 

従業員が退職を迷った時

管理職は蚊帳の外?

 従業員が自発的に退職を決める時、その決断はすばやくなされることがほとんどです。自発的に退職した人の77%は、新しい仕事を探し始めてから3カ月以内に退職するか、そもそも新しい仕事を積極的に探してもいませんでした。多くの場合、従業員は積極的なコミュニケーションを持たずに退職を決断します。自発的に退職した人の36%は、退職の決断をする前に誰とも話し合わなかったと報告しています。退職検討時に誰かと話し合った場合でも44%の人は、直属の上司や管理職とは話し合わなかったと報告しています。

 従業員がそのような話し合いを持ちかけるのは、同僚であることが多く、管理職は蚊帳の外に置かれている傾向があるようです。つまり、管理職が従業員の離職を防ぎたいのであれば、従業員が退職の意志を固める前に、適切な対話を始めることが大切だと言えるでしょう。

 

退職を未然に防ぎたい!

介入の機会はどこにある?

 従業員が退職を検討する際、管理職に相談する可能性が低いことを考えると、自発的に退職した人々は、退職前の最後の数ヶ月間の管理職とのコミュニケーションについては、どのように報告しているのでしょうか。前出のGallupの調査結果によると、自発的に退職した人の45%は、退職前の3カ月間に管理職やリーダーと、仕事の満足度、パフォーマンス、または組織での将来について積極的に話し合わなかったと報告しています。

 一方、退職前の3カ月間に管理職やリーダーと話し合った人のうち、その組織での将来について話し合った人は全体の29%、仕事の満足度について話し合った人は28%でした。仕事で成果をあげるために必要なことについて話し合った人は18%で、組織に留まるために何が必要かについて話し合った人は、さらに少ない17%という結果でした。

 つまり、42%の自発的退職者は、組織がなんらかの策を講じれば離職を防ぐことができたと話す一方で、45%の自発的退職者は、退職前の3カ月間にマネージャーやリーダーが仕事の状況について積極的に話し合うことをほとんどしなかったと報告しています。この結果は、策を講じれば、離職をほぼ半分に削減できる可能性を強調しています。

 

予期せぬ退職を防ぐための

対話の持ち方

 状況が好転すれば、退職を考え直したと答えた人に、管理職や組織が何を改善すればよかったかを自由回答で尋ねたところ、最も多かった回答は、追加の報酬や福利厚生の提供でした。報酬と福利厚生は、過去の研究でも重要な従業員定着の要因として知られています。離職を防ぐことができた退職者の70%は、管理職とのよりポジティブな個人的な対話の創出(21%)、組織の問題への対処(13%)、キャリア向上の機会の創出(11%)、人員配置や業務負荷の懸念への対処(9%)など、日々の業務管理などに関して改善を求めていたと報告しました。

 

 以下は、従業員が組織に求めている改善点を示しています。管理職と組織の行動がこれらのニーズに対応しない場合、従業員はそれらを満たしてくれる別の雇用主を探す可能性が高いことがわかっています。

 

「同じ仕事をしている同僚の給与と役職に、自分のそれも合わせることで、チームへの貢献を認めること」

 

「従業員一人ひとりを尊重して扱い、従業員の幸福に関心を示すこと」

 

「仕事に自律性を与え、キャリアを前進させる道筋を支援し、従業員が将来に投資していると感じられるような役割を組織として積極的に果たすこと」

 

管理職が心得るべき

従業員との効果的な4つの対話法

 管理職は、従業員との日常的な対話に以下のトピックを含めることで、人材の定着率を向上させることが期待できます。

 

1. 報酬とキャリアの向上

 管理職は、報酬の問題について身動きが取れないと感じているかもしれません。しかし、「報酬」と「キャリアの向上」は、従業員がどう評価され、組織として進歩しているかを示すのに密接に関連した指標です。さらに、自発的退職者を引き留めることができる有力な方法であることが分かっています。同時に、報酬は退職者の不満の主な原因ともなります。管理職は定期的に仕事の適正市場価値を評価し、従業員のパフォーマンスに応じて調整するとともに、従業員と給与について毎年話し合うことも重要です。

 管理職やリーダーの側から、キャリア開発と成長のための明確な道筋を示すことにより、組織内での評価や、今後の成長や将来に対しての希望が持て、従業員のエンゲージメント向上が期待できます。

 

2. 意味のある対話を持ち、関係を構築

 従業員の離職を防ぐもう一つの重要な要素は、管理職と従業員の関係を強化することです。離職を防ぐことができた退職者が求めた組織への変化の約3分の1は、良好な対話の増加、配慮のなさやマイクロマネジメントの減少、管理職とのネガティブな対話の減少に関連していました。

 管理職が各直属の部下と週1回、意味のある対話を持つと、現場、ハイブリッド、フルリモートなど働き方に関わらず、従業員がエンゲージする可能性が4倍になると言われています。これらの対話は、目標や優先事項、最近の仕事に対する認識、協力、従業員の強みの活用に焦点を当てると、より意味のあるものになります。定期的に行うのであれば、15〜30分程度の短い時間でも効果があります。

 

3. 管理職と従業員の間の障壁除去

 退職者が退職を決意する前に組織へ求めていた変化としては、人員配置、業務負荷、スケジュール管理など、管理職が対応しきれてない組織内の問題への改善などが挙げられています。

 管理職が問題に対処しない場合、それらは組織のパフォーマンスと、従業員の定着の両方に対する障害となります。摩擦のポイントを迅速に特定し、それらの問題が人々にどのように影響するかを議論し、対処するチームの役割を明確にすることが重要です。これらの不満やワークフローの問題が解決されずに持続すると、燃え尽き症候群を引き起こす原因ともなりえます。

 

4. 対話を習慣化する

 管理職と従業員の間に、意味のある対話が3カ月間ないとすると、それは長すぎると言われています。従業員の再エンゲージメントと離職防止において重要な役割を果たすのは、管理職と従業員間で頻繁に設けられる意味のある対話です。仕事の満足度、パフォーマンス、組織での将来などの問題について、継続的で意味のある対話を行うことは、有能な従業員の育成と定着に不可欠です。管理職は受け身にならず、積極的に対話の機会を作り、コミュニケーションを促進しましょう。

 

参考リンク:

Gallup『42% of Employee Turnover Is Preventable but Often Ignored』

 

 

執筆者:

Chihiro Bjork

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