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知らずにいたら、時代遅れ。無視できない「DE&I」

更新日:2023年12月26日




職場の人間関係が劇的に改善する?!スター・プロフィールとは

 アメリカでHRが頭を抱える問題の一つとして、従業員のパフォーマンスに起因する解雇や、管理職と従業員間のコミュニケーションの問題などがあります。その対策として効果的とされる”Star Profile(スター・プロフィール)”という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?これは、特定の従業員に対してのパフォーマンス・レビュー(勤務評価)の観点からではなく、該当のポジションに就く従業員全般に、会社が望む行動や技術の指標を提示するものです。

 長年雇用弁護士として活躍し、現在は執筆活動をしているJathan Janove氏は、世界最大規模の人事協会、Society for Human Resource Management(SHRM)の発行する『HR Magazine』などで、2006年よりスター・プロフィールの有効性を伝えており、今回は、実例とともに、スター・プロフィールの解説を紹介します。

以下、Jathan Janove氏の記事の抜粋を紹介します:

強豪スポーツチームにもヒントが?人事にも通じるチームビルディング・メソッド

 なぜ、スター・プロフィールは効果的なのでしょうか?強豪のスポーツチームにもヒントがあるようです。多くの強豪チームには多様性があります。この多様さは、人種に限ったことでなく、出身国、経済や文化背景、使用言語などを含みます。チームメイト間の「違い」がチームの成功や結束感の足かせにならないのは、なぜでしょうか?また、なぜこれがスタープロフィールと関係があるのでしょうか?

 よく考えられたスター・プロフィールは、強豪チームの運営メソッドと似ています。強豪チームでは、より大きな目標や目的と共に、目の前のゴールを明確にし、チーム内のどんな役目やポジションの人にもそれがシェアされます。これにより、ヒエラルキーを意識させずに、一人一人の責任感の向上が期待できます。例えば、強いチームが試合で負けた時に、エース選手が「『自分』が至らなかった」と発言することにも、そういった意識を見てとれるのではないでしょうか。

 

解雇まで考えた「問題の社員」がスター・プロフィールにより大変化した事例

 私とスター・プロフィールとの最初の出会いは、雇用弁護士として、ある会社の経理部長と人事統括責任者が、社員の一人を解雇したいという案件を担当した時でした。経理部長は年配の白人男性、社員は若い黒人女性でした。彼は、長年彼女のパフォーマンスに不満がありましたが、うまく対処できずにいたことにより誤解が生じ、その結果、彼女は「経理部長から性差別と人種差別を受けている」と人事に報告する事態へと発展しました。

 もちろん、人事はこの状況下で彼女を解雇する判断はせず、代わりにスター・プロフィールを試すことにしました。「前述のポジションで一社員が成功するために、会社として、管理職として、期待すること」を経理部長に挙げてもらい、それを3つの指標にまとめました。1つ目は、そのポジションに就く社員に求める技術面のパフォーマンス、2つ目は、その部署の総合的な目標、3つ目は、この部署の社員と経理部とのコミュニケーションの在り方でした。

 その後、作成したスター・プロフィールを前出の社員に提示し、この3つに関して、話し合いの場を設けました。経理部長は、「今までの関係を一新し、この指標を現実にするために何ができるか」と彼女の意見を聞くと、彼女は、スター・プロフィールを実現するプロセスに喜んで協力したいと答え、前向きな結論に至りました。その後、経理部長は、この社員を解雇する意志がないことを人事に報告し、彼女の貢献に対する評価も付け加えました。約1年半後、彼女は家庭の事情で退職することになりましたが、経理部長は「落ち着いたら、復職して欲しい」と伝えました。

この価値観を知らずにいたら、時代遅れ。無視できない「DE&I」

 雇用弁護士をしていた頃から現在まで、色々な案件をみてきましたが、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関連するトラブルを起こしやすい組織に共通する問題は、「コミュニケーション不足」です。チームの結束性や協働的なゴール設定、また、それを実現するための道しるべや意思疎通がない場合、従業員は失望、不安、ネガティブな憶測からくる無力感を感じると言われています。また、その無力感は、DE&Iの実現を遠ざけるでしょう。

※DE&Iとは?:組織で働く人材が、性別、国籍、年齢などにかかわらず尊重され、それぞれの状況や特性などに合わせて、適切なツールやリソースが提供されることで、公平性を保ち、個人が能力を発揮できる組織を目指す考え方。また、一人一人が、組織の一員として、自分の「声」が尊重されていると感じられることも重要とされます。なお、性別、国籍、年齢の他に、婚姻歴、子どもの有無、ペットの有無、身体的・精神的障害の有無、宗教、社会的地位、言語、学歴、性的嗜好なども尊重されるべき事柄です。

スター・プロフィールを知った今、人事ができること

 さて、スター・プロフィールの序章を学んだみなさんができることは、さらに深く学び、会社に存在するそれぞれのポジションにおけるスター・プロフィールを、経営者や管理職に作成してもらうことです。これは、従業員のパフォーマンスと、組織の目指すところの足並みを揃えるために効果的で、さまざまな才能、スキル、能力をもった多様性のある人を受け入れることにも繋がります。

 Mary Lanning Healthcareで人事チーフを勤めたBruce Cutright氏は、以下のように話します。「私は、リタイアする直前にスター・プロフィールを知りました。会社が求める結果を従業員から引き出すことができるこのテクニックを、もっと早く知りたかったと思っています。良いスター・プロフィールを作ることは、DE&Iの観点からも効果的で、『先入観や偏見を持って見られている』といった従業員の気持ちに繋がりうる誤解を取り除くことが期待できます。また、人事が、問題のある管理職を早期に検知し、トレーニングや配置換えなどを検討する指標にもなります。さらに、管理職が作成したスター・プロフィールの原稿に人事が目を通すことで、偏見や先入観に繋がりそうな内容や、DE&Iに反する内容を前もって検知し、より良いものに変えていくことができます。」

執筆者:

Chihiro Bjork

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