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AIと人材投資の間で──今、経営者が問い直すべきこと

  • huminaresource
  • May 12
  • 3 min read

AIへの投資が急拡大しています。2026年のAI関連支出は前年比44%増が見込まれる一方、従業員研修予算の伸びはわずか5%にとどまり、従業員一人当たりの平均学習時間は47時間から40時間へと実際に減少しています。

 ナレッジワーカーの約4分の3がすでに業務でAIを活用しています。しかしその60%が、「効果的な使い方について正式な研修を受けていない」と回答しています。強力なツールが現場に広がる中、それを扱う人への投資は静かに削られています。

 この非対称な構図が、今の米国ビジネス環境で広がっています。



コスト効率の裏側にある、見えないリスク


 背景にあるのは、コスト効率を求める経営判断です。AIを導入し、採用・研修・従業員支援の予算を絞ることで、短期的な利益率は改善します。Twitterの共同創業者として知られるジャック・ドーシーが率いるBlock社(フィンテック企業、旧Square)をはじめ、AIを大規模レイオフの根拠として示す企業も出てきました。 しかし、人材への投資を「削れる費用」として扱う企業が支払うコストは、数字に現れにくいものです。米国の大手調査・コンサルティング会社であるGallupの試算によれば、意欲を失いストレスを抱えた従業員が世界経済に与える損失は、年間約9兆ドルにのぼります。離職・欠勤・パフォーマンス低下といった「見えないコスト」は、当該従業員の年収を上回ることさえあります。米国の大手給与計算・人事管理サービス企業ADPの従業員モチベーション指数が6か月連続で低下していることは、その静かな警告とも読めます。


逆の選択をしている企業が示すもの


 一方、逆の選択をしている企業もあります。IBMは解雇の流れに逆らい、エントリーレベルの採用を拡大し、職務を「持続的なスキル」中心に再設計すると発表しました。同社の最高人事責任者であるニッコル・ラモロー氏はこう語っています。「3〜5年後に最も成功している企業は、この環境でエントリーレベルの採用を倍増させた企業だ」。 Amazonは数十万人の従業員をテクノロジー対応職へ移行させるため、12億ドル超を投じています。Mastercardは社内AIプラットフォームで従業員と成長機会をマッチングし、外部採用コストの削減と定着率向上を両立させました。ドイツ発のビジネスソフトウェア企業であるSAPは、継続学習の時間とウェルビーイング支援を業務週の中に組み込んでいます。 研究によれば、AIを活用しつつ適切な研修と支援が整った環境では、タスクの完了速度が25%向上し、品質は40%改善、より高度な業務に充てられる時間は最大36%増加するといいます。AIの生産性効果は、人への投資と組み合わさったときに初めて最大化されます。


日本企業の視点が、今この議論の中心にある


 日本企業が長年大切にしてきた「人を育て、長く活かす」という考え方は、実は今この議論の中心にあります。米国市場でAI活用が加速する今、その視点をどう経営判断に織り込むか。目先の効率と中長期の競争力をどう両立させるか。 問い直すべきは、単なるコスト最適化にとどまりません。優秀な人材を採用し(Hire)、定着させ(Retain)、そして本当に意欲を引き出す(Engage)こと──この三つを一体として捉えるとき、AIと人材投資の関係は対立ではなく、相乗効果として機能し始めます。 答えは企業によって異なりますが、問い自体から目を逸らすことは、もはや難しい時代になっています。

 

執筆者:

Chihiro Bjork

 
 
 

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