給与だけでは足りない 評価・承認・企業文化をつなぐ新常識
- huminaresource
- Aug 10
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従業員が会社に求めるものが変わってきました。給与の決まり方に納得感があること、成果に対してすぐ反応が返ってくること、そして自分の貢献をタイムリーに認めてもらえること。この三つです。オーランドで開催されたSHRM26のセッション「Recognition Reimagined:メリットと階層を超えた透明性のあるアプローチ」では、こうした変化を踏まえ、報酬・評価・承認のあり方を見直す議論が交わされました。登壇したのは、人事・報酬コンサルティング大手SullivanCotterのアマンダ・ウェジントン氏とジェニファー・ギヴンズ氏です。「今の仕組みが従業員に正しいメッセージを送れているか、そこを本当に確かめたいんです。タイミングは適切か、透明性はあるか、信頼できるか。何より、今の時代の働き手にとって人間味のあるものになっているか」と問いかけました。
二人が繰り返し強調したのは、承認は給与の代わりにはならないという点です。ただし、承認のあり方こそが、給与や評価、社風がどう受け止められるかを左右します。従業員に送るメッセージは、タイムリーで透明性があり、信頼でき、人間味のあるものでなければならない―と両氏は話しました。
「昇給3.5%」の限界
メリット制度だけでは心は動かない
メリット(功績評価)そのものは今でも重要です。ただ、年に一度の表彰だけで、社風やエンゲージメント、評価面談、給与の透明性まですべてを支えるのは無理があります。
実際、多くの企業のメリット予算は2〜4%程度にとどまり、この幅では、はっきりとした差をつけるのは至難の業です。マネージャーは「自分はちゃんと差をつけている」と思っていても、スプレッドシートを見返すと、最も評価の高い部下でも昇給率はせいぜい3.5%ほど、というケースが少なくありません。それでは差別化とは呼べず、原因はマネージャーが評価の低い部下に低い昇給を告げる会話を避けたがることにあります。結局、全員がほぼ同じ昇給率・同じ評価を受け取ることになり、それは功績への報酬というより、単なる一律の昇給にすぎません。
説明できない報酬制度は
もう通用しない
全国調査でも、多くの企業が独自の報酬哲学(給与の考え方の指針)を持ち、市場の中央値を目安にしていると回答しています。ただ、本当に問われるべきは別のところにあります。マネージャーがHRに聞かなくても、自分の言葉で説明できるかどうか。多くの企業で、その答えは「ノー」です。
給与の透明化を義務づける法律が広がる中、従業員は公開された給与レンジを見て、「なぜ自分はこの金額なのか」と直接尋ねるようになっています。求められているのは、市場相場の説明以上に、意思決定の一貫性そのものです。
解決策は意外とシンプルです。従業員もマネージャーもさっと目を通せる1ページほどの報酬方針があり、会社が何を大切にし、何に対して給与を払うと約束しているかが伝わればいい。そこに研修や対話式の全社説明会を組み合わせれば、マネージャー自身が説明を担えるようになります。
年に1度の評価から継続的な承認へ
従来の評価制度は、そもそも管理のために設計されたものです。目標を立て、年度末まで待って評価し、昇給に反映し、また11カ月待つ。予算の統制には向いていますが、フィードバックは遅れ、行動と報酬の結びつきはどうしても弱まります。「うまくいっていることは、その場で、まだ記憶が新しいうちに認めてあげる。それが一番響くタイミングなんです」
しかも、そのために大掛かりな仕組みはいりません。ちょっとした声かけ、一本の電話、口頭での一言。そうした積み重ねの方が、11カ月後にやってくる年次評価よりずっと効果的に、望ましい行動を後押しします。
マネージャーだけに頼らない承認の広がり
マネージャーは指導役として欠かせない存在ですが、すべてを見ているわけではありません。「うちのチームには長年在籍しているメンバーがいて、冗談で『歴史家』と呼んでいるんです。頼まれてもいないのに、新人を自然にチームへ迎え入れてくれる。それは、マネージャーの私が日々の業務では気づけない、同僚同士の承認なんです」とギヴンズ氏。
同僚は、誰かがさりげなく一歩前に出た瞬間や、新人を支えた場面に気づいています。ピア同士やチーム単位の承認は、そうした見えにくい貢献を拾い上げ、エンゲージメントや一体感を強める役割を果たします。
「罰」ではなく「上乗せ」
メリットを補うプラスアルファの報酬
メリットを補う手段としては、次のようなものが考えられます。
・スポットボーナス(功績への即時の報酬)
・マイルストーン賞(節目の貢献を称える)
・成長機会への投資
・リーダーシップ経験やメンタリングの機会
・非金銭的な承認(価値観をその場で伝える)
現実的なやり方の一つは、まず全員に2〜3%の基本昇給を約束したうえで、特に優れた成果には別枠の予算を用意することです。従業員はもともと昇給を見込んでいるので、これなら「罰」ではなく「上乗せ」として受け止められます。
どんな見直しをするにせよ、まずは自社の承認の現在地を確かめることから始まります。何が機能していて、何をやめるべきか。給与・評価・承認をひとつの文化としてつなげていくことが、エンゲージメントを取り戻す近道になるはずです。
参考:SHRM26「Recognition Reimagined: Transparent Approaches Beyond Merit and Hierarchy」
執筆者:
Chihiro Bjork




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