高齢労働者が支える米国の労働力65歳以上の採用が事業競争力のカギに
- huminaresource
- 5 days ago
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米国では、労働力の急速な高齢化が進んでいます。米国人事専門家団体 SHRMの最新データによれば、55〜64歳、そして65歳以上の人口は過去30年間でほぼ倍増し、就業者数も2025年時点で65歳以上が約1,200万人に達しました。背景には、平均寿命の延伸、ベビーブーマーの高齢化、出生率低下による若年層の伸び率の鈍化があります。
注目すべきは、この65歳以上の就業者のうち 60%が「現役として働き続ける意向」 を持ち、29%は一度退職後に再び労働市場へ戻った層(アンリタイア) である点です。米国では、経験やスキルを持つシニア層が労働市場で存在感を高めています。

高齢人材の価値:
即戦力・信頼性・知識継承
SHRMの調査では、HR担当者の 92%が「高齢労働者は他世代と同等以上のパフォーマンス」と回答。18〜54歳の従業員の9割以上も、高齢同僚との協働を肯定的に捉えています。
企業が高齢人材を評価する主なポイントは次のとおりです:
深い専門知識(長年の経験に基づく判断力)
高い信頼性・忠誠心
コミュニケーション・リーダーシップ・メンター力
ナレッジトランスファー(知識継承)の担い手
組織の年齢多様性(Age Diversity)の向上
50歳以上の生活・就労支援を行う AARPは、高齢人材が持つ「耐久性のあるスキル(durable skills)」が競争優位に寄与すると指摘しています。
誤解と現実:
高齢労働者は“変化に強い”
高齢労働者には、「新しい技術が苦手」「変化に消極的」といったイメージが残っています。しかし実際のデータは真逆です。
74%がAIスキルの研修参加に前向き
81%が「新しい技術に適応できる」と自信を持つ
また、米国では “retirement” の概念が変化しており、経済面だけでなく、「社会参加」「生きがい」を理由に働き続ける人も増えています。
企業に求められる
採用戦略の見直し
高齢労働者向けの採用プログラムを明確に持つ企業は多くありませんが、SHRM調査では、多くのHR担当者が 年齢に中立的(age-neutral)で包摂的(inclusive)な採用プロセス の導入に意欲を示しています。
改善のための主要ポイントは以下です:
1. 年齢バイアスのない採用プロセス
採用担当者のバイアス教育
Job Description から「digital native」などの排除
経験年数に上限を設けず「最低X年」と記述
画像・表現の世代多様性を意識した採用広報
※米国では ADEA(Age Discrimination in Employment Act:年齢差別禁止法)への配慮も重要です。
2. 採用チャネルの多様化
対面型イベントや電話対応の活用
世代ごとのメディア利用習慣を考慮したアプローチ
3. 高齢層に響く福利厚生パッケージ
柔軟な勤務時間
介護休暇
段階的リタイア制度(Phased Retirement)
4. 外部機関との連携
AARPや地域のワークフォース開発機関と協力し、シニア向けジョブフェアやワークショップを共催する手法も効果的です。
年齢多様性は
組織の強さにつながる
米国社会の高齢化は長期的に続くことが確実視される動きであり、65歳以上の労働参加は今後も増加が見込まれます。シニア人材は、信頼性・経験・学び続ける姿勢といった、米国市場での事業運営に不可欠なスキルセットを提供します。
高齢人材を活かす「Age-Inclusive」な採用戦略は、スキルギャップの解消、組織のレジリエンス強化、ナレッジ継承、人材多様性の向上に直結します。
米国事業を推進する日本企業にとって、いまや高齢労働者の活躍を前提としたタレント戦略への移行は、競争力確保のための重要な経営課題と言えるでしょう。
執筆者:
Chihiro Bjork






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