求める人材が見つからない-米国の労働市場にみる「スキルのミスマッチ」

募集を続けているのに、求める人材と出会えない。候補者はいても、必要な経験やスキルが合わない。採用活動に携わる方なら、こうした状況に心当たりがあるのではないでしょうか。
採用が思うように進まないとき、募集方法や待遇を見直す企業は少なくありません。それとあわせて考えたいのが、募集要件と候補者像が、実際の仕事内容や期待する成果に結びついているかという点です。
米国人材マネジメント協会(SHRM)が2026年9月に公表した労働市場の分析では、求人需要がコロナ禍前の水準に近づく一方で、職種や経験、地域のずれが採用を難しくする状況が示されています。こうした「スキルのミスマッチ」は、採用難を考えるうえで見逃せない視点の一つです。
求人と人材が存在しても、採用につながるとは限らない
SHRMは、Lightcastの求人掲載データをもとにした指標が、2026年7月時点でコロナ禍前の水準の97.7%に達していたと報告しています。また、失業者数を求人件数で割った比率は、2026年4月から7月にかけて1を下回る水準で推移しました。単純に見ると、失業者の数より求人の数が多い状態です。
しかし、求人があることと、企業が必要とする人材に出会えることは同じではありません。求人が多い職種と、求職者が経験を持つ職種が異なれば、労働市場全体では人材がいても、個々の採用が難航することがあります。地域によって、求職者と求人の分布が合わないケースもあります。
SHRMが示した3カ月平均の指標では、該当する職務経験を持つ失業者が十分にいないため、埋まりにくいと推計される求人の割合は、2026年7月に36.6%でした。一方で、求職者側にも、これまでの職務経験を活かせる求人が見つからないケースがあります。
これは採用難の原因を一つに絞るものではありません。採用の状況は職種や地域によって異なり、求人の条件や候補者との接点など、複数の要素が関わります。SHRMの分析が示しているのは、求人件数や失業率だけでは捉えきれない、職種や経験のずれにも目を向ける必要があるということです。
「必須条件」は、仕事で成果を出すために本当に必要か
採用が難航すると、募集媒体を増やす、待遇を見直すといった対応をすることがあるでしょう。そうした施策が有効な場合もありますが、募集要件と仕事内容がかみ合っていなければ、候補者との出会いにつながるとは限りません。
たとえば、特定の業界での経験や一定の経験年数を必須としている場合、その条件は入社時点で不可欠でしょうか。それとも、入社後の研修や実務を通じて身につけられるでしょうか。
募集要件を見直す際は、条件を単に緩めるのではなく、求める業務や成果を具体化するのがポイントです。「入社時点で必要なスキル」「入社後に習得できるスキル」「あると望ましい経験」に整理すると、候補者像をどこまで広げられるかが見えやすくなります。
学位や肩書きだけでなく、職務に必要なスキルを見る
SHRMは、エンジニア人材をめぐる分析の中で、企業が若年層を採用対象とする動きと、従来の学位要件からスキルを重視する採用への移行に触れています。これは、あらゆる職種で学位や職歴を一律に見直すよう求めるものではありません。職務に必要な能力を、学歴や肩書きだけに頼らずどう評価するかという視点につながります。
分析の中では、医療・技術職、管理職、コンピューター・数学職、ビジネス・金融職、設置・保守・修理職などで、職種と経験のミスマッチによる採用難が大きい傾向が報告されています。こうした職種では、近接する経験やスキルを持つ人材をどう見極めるか、入社後の育成で補える能力は何かを、現場とともに検討することが選択肢になります。
職種名や業界名だけで候補者を判断すると、別の環境で培われた、活かせる経験を見落とすことがあります。候補者がどのような課題に取り組み、どんな行動を取り、どのような成果を上げたのか。経験の名称だけでなく、その中身に目を向けることが、仕事に必要な力を見極める助けになります。
採用要件を、採用から定着までつながるものに
採用要件を見直すことは、企業が候補者に合わせて基準を下げることではありません。仕事で成果を出すために必要な力を明確にし、その力を持つ人材を幅広い経験の中から見つける取り組みです。
この経験や資格は、入社時点で本当に必要か
必須のスキルと、入社後に習得できるスキルを分けているか
職種名や業界経験だけで候補者を絞っていないか
入社後に期待する役割や成果を、候補者に具体的に伝えられるか
人事と現場で、候補者を評価する基準が共有されているか
採用要件が明確になると、候補者を見極めやすくなるだけでなく、入社後の役割や成長機会も伝えやすくなります。採用時に期待をすり合わせることは、入社後の活躍や定着を考えるうえでも大切です。
Humina Resourceでは、企業の採用課題や求める役割を伺いながら、採用から定着、エンゲージメントまでを見据えた人材支援を行っています。「募集を続けても候補者との接点が生まれにくい」「採用要件を整理したい」とお感じの際は、ぜひお気軽にご相談ください。 求める人材との出会いにつながる方法を、一緒に考えていきましょう。
執筆者: Saki Abe




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