米国の『人材戦略』が動き出す 日本企業は人材危機に備えられるか
- huminaresource
- Sep 10
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8月12日、トランプ大統領は、連邦政府の人材育成への取り組みを抜本的に変革することを目的とした計画『America’s Talent Strategy: Building the Workforce for the Golden Age(アメリカ人材戦略:黄金時代に向けた労働力の構築)』を発表しました。この戦略は、雇用主の人材ニーズに対応するための投資の方向性を示すとともに、より多くのアメリカ人が高賃金の職に就く機会を広げ、国内産業の再工業化を進めることを目指す計画として位置づけられています。
公開された文書によると、「この戦略は、アメリカ企業の人材ニーズに対応するための包括的な計画を示しており、既存の人材育成システムを統合して効率性と効果を高めること、職業訓練プログラムに対する説明責任を強化すること、現職労働者のスキル向上を図ること、そして4年制大学に代わる新たな選択肢を整備することを目的としています。」
新たな人材戦略の
5つの戦略的柱
この計画は次の5つの柱に基づいています。実行にあたり、雇用主は訓練プログラムの共同設計、スキルの認証、投資の方向付けに関与する役割を担うことが想定されています。
就労に基づく学習モデルの拡大に関する方針
需要の高い職業と人材のマッチングに関する取り組み
連邦政府の人材育成プログラムの合理化に向けた方策
連邦資金を用いた人材育成プログラムの透明性および説明責任の強化に関する施策
米国労働力が人工知能(AI)を活用した業務に対応できるよう備えるための計画
トランプ政権が考える
人材育成の課題
トランプ政権の文書では、「大学進学を万人の進路とする従来のモデルは、雇用主と労働者の双方のニーズに十分応えていない」とされています。その結果として、雇用主には安定した人材パイプラインが存在せず、労働者は高賃金のキャリアへの道にアクセスしにくかったことも示されています。また、人材育成プログラムは政府内で分散しており、さらにAIの進展が従来のシステムの対応速度を上回って仕事のあり方を変えている、と記されています。
新・人材戦略における
具体的な取り組み案
前出の文書では、新たな人材戦略における具体的な取り組みとして以下のようなものが提案されています。
登録制の見習い制度(アプレンティスシップ)の拡大
職業教育・技術教育プログラムの近代化
産業界との連携による企業ニーズと就労型学習の接続強化
長期失業者や不完全就業者に対するアウトリーチの優先
退役軍人や元受刑者の再就職経路の整備
人材データシステムの高度化
労働者の流動性を制限する職業免許要件の見直し・撤廃
産業需要に沿った資格・認定の特定
複数の人材育成プログラムの統合による一体的なシステムへの移行
AIリテラシーとスキル開発を最優先し、地域ごとの雇用主主導によるAI研修・イノベーションセンターを支援し、AIに特化したパイロット事業を展開して、技術進化による労働市場の混乱に迅速に対応できる再訓練を推進
米国で事業を行う企業にとって、この人材戦略の展開は無視できない動きと言えるでしょう。今後の取り組みがどのように形となり、人材の確保や育成に影響していくのか、その実行と成果が注目されます。
参考記事:
SHRM『White House Issues Comprehensive Workforce Development Strategy』https://www.shrm.org/topics-tools/news/trump-workforce-development-strategy
執筆者:
Chihiro Bjork






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